Competition
Author: Elf Chick






それは或る美しい朝のことでした。 裂け谷の静かな森の小道には明るい陽射しが燦々と落ち、 動くものの影ひとつ見えません。 突然、その静寂を破るかのように一頭の白馬が走りいでました。 鞍も置かない白馬の背には、ひとりのエルフが軽やかに跨っています。 その長い金の髪は朝の光にきらめいて、まるで流れる金のよう。 滑らかな白磁の肌に、きらきらと輝く蒼い瞳。 エルフのあげた笑い声が、柔らかい楽の調べのごとく、森の小道のその空間をさざめかせました。

金色の髪をしたエルフがもうひとり、現れました。 こちらのエルフは黒毛の馬を駆り、やはり顔にはこぼれんばかりの笑みを浮かべています。 レゴラスは速度をゆるめ、後からきたエルフの行く手をふさぐかのように馬の向きを変えました。

「ああハルディア、早駆けで競争しようっていいだしたのはきみなのに、 きみが追いつけないんじゃ意味ないよ!」
ハルディアは少し傷ついたような表情を作ってレゴラスのすぐ脇に馬を寄せました。
「そうですね、でもレゴラス。もし貴方がフライングしなければ、 とうの昔に私は貴方を追い抜いていたに違いない」
レゴラスのわざとらしいびっくり顔にハルディアもぷっと吹き出します。
「ハルディア! 僕はフライングなんてしてないよ! ただほんのちょっと …… きみより馬に乗るのが早かった、ってただそれだけさ!」
素知らぬ風を装ってとびきりの笑顔を向けてくるレゴラスに、ハルディアはただくすくすと笑っています。

「フライングだったかどうかはさておいて。今日の勝負場所、あの弓の練習場までならきっと私の勝ちですよ」

「よし! 競争だ!」

そうしてまた2人の競争がはじまりました。結局、さきに広場に着いたのはレゴラスでした。 後から着いたハルディアはひらりと馬から降りると、 美しいマルローン樹の木陰に座ってぽうっと思いを彷徨わせているレゴラスのもとへと歩み寄りました。 ハルディアの話しかける声がレゴラスを現実に引き戻しました。 レゴラスはゆっくりとハルディアのほうを振り向きました。

「あ、ごめん。いまなんて言った?」レゴラスがたずねます。
「美しい日ですね、といったのですよ。 わが美しきエルフ王子を打ち負かすにはこれ以上ない、最高の日よりです …… ってね」
にかっと笑ってそう言いのけるハルディアに、レゴラスもすっくと立ち上がりました。
「おっとハルディア、それはどうかな? だって勝つのはこの僕。 で、勝者の権利を得るのは勝った方 …… いいよね?」
レゴラスはにやりと笑って歩いていくと、矢を射る場所で立ち位置を決めました。 腰を下ろしたハルディアは、そのレゴラスの美しい立ち姿にしばし、ただ見惚れました。

「わかりました、ではお先にどうぞ。わが対戦相手の腕はこちらでゆっくり思い出させていただきますよ」
皮肉気にそうは言っても、ハルディアはレゴラスの弓の腕ならよく知っています。

レゴラスは矢筒から抜いた矢を一本やわい地面に突きたて、 ひとしきり腕を伸ばしたり、弓の弦を確かめたりしています。 レゴラスが地面から矢を抜き、優雅な物腰で弓へとつがえました。 100フィートほど先の的に向かって、矢の柄に指をすべらせながらしっかりと狙いを定めます。

レゴラスはエルフにしかできない正確さで矢を放ちました。 矢は的の中心を射抜きます。レゴラスは笑顔でハルディアのほうを振り返りました。

「さ、君の番だよ」

レゴラスがハルディアに場所を譲りました。 弓を引くハルディアの薄手のチュニックの下、 背と肩の筋肉が盛上がります。レゴラスはその下、草色のレギンスへと 視線を落としました。 ぴったりと身に張り付いたレギンスが、 逞しく無駄のないハルディアの脚のラインをあらわにしています。 ざわりとする感触がレゴラスの背筋を通り抜けました。

ハルディアの射った矢は的こそ捉えはしたものの、レゴラスと比べると少しだけ中心から逸れています。 それでも振り返るとハルディアは満面に笑みを浮かべ、レゴラスのほうにやってきました。

「負けたっていうのに楽しそうだね。どうして?」
ハルディアはレゴラスの腰を引き寄せると、背につけた矢筒をはずしていきました。 それから敏感な耳先に口元を寄せ、こう囁きました。

「なぜかって? それはね、この勝負、敗者となっても得るものがあるからですよ」
ハルディアはそう言うと、レゴラスの耳先をちろりと舐めました。 レゴラスはその感触でひざが抜けそうになりました。

「なるほどね。じゃあ、これからも今日みたいな勝負を時々することにしよう。 勝者の特権を得るのは僕にとっても悪くはない、ことだからね」

そう語るレゴラスの声はハルディアの舌が首筋へと落ちたせいでわずかながら震えています。 ハルディアの唇は今度はレゴラスの唇を捕らえ、 覆いかぶさるように深く、熱く、息が止まるように口づけました。

「…… 君の腕前が弓だけじゃないってこと、よくわかった」
唇を離すと荒い息のままレゴラスはそう言って、ハルディアにこぼれるような笑みをみせました。

「私の腕なら若君にじっくりと教えて差し上げる」
レゴラスの身体はぴくりと動きました。 いつのまにか、背中が木の幹に押し付けられています。 熱く見上げたレゴラスの瞳が濃く蒼く翳ってゆくと、 その眼差しにハルディアも絡め取られ、ますます熱を昂ぶらせていくのでした。

レゴラスがハルディアの顔を引き寄せました。改めて2人は唇を重ねます。 密着した体で互いの昂ぶりが刺激され、 2人の喘ぐ声はたがいの口の中へと消えていきました。 レゴラスの指は滑らかな素肌を求めハルディアの胸元へと落ちていくと、 しばしチュニックの裾をさまよってからその向こう側に滑り込みます。 レゴラスの指先が熱い素肌にじかに触れると、ハルディアはそのひんやりとした感触に 声をあげ、唇をあわせたまま思わず腰を動かしました。 すると今度はレゴラスからあっとくぐもった声が上がります。

レゴラスがくるりと身をいれかえて、今度はハルディアが背を木に着ける格好となりました。 ふとした思い付きでまたもやハルディアが体勢を変えようと試みます。 が、2人の身体はハルディアの思うようには動かず、そのかわり木の根っこにつまづきました。 2人は笑いながら、レゴラスを上にして地面へと倒れこみました。

「エルフといえば優雅な種族、のはずだったけど、僕たちときたらこれだもんね」
レゴラスはくすくす笑いながら、ハルディアの首筋に吸い付くと、 喉元のくぼんだところを円を描くように舐めはじめました。

「ああレゴラス、貴方と来たら、ほんとうに手に負えない方だ」
レゴラスの金の髪に指を差し入れると、ハルディアはその長い絹糸のような髪を愛しげに梳きました。

「もう降参なの? じゃあもし僕がこんなことをしたら、君はいったいどうなっちゃうのかな?」
レゴラスは手を伸ばすと、レギンスの上からそっと、ハルディアの堅く張ったものに手を添わせました。

「おっとレゴラス! そこは気をつけていただかないと、…… すぐに終わってしまうかもしれませんよ」
ハルディアは息を詰め、レゴラスのチュニックの紐を素早く解くと、その胸元に手のひらを這わせました。 声を上げそうになってもレゴラスは必死で唇をかんで声を抑えています。 しかし、やがてハルディアが舌で乳首を弄びはじめると、もうレゴラスはがまんできなくなりました。

「ああエルベレス! ハルディア、もう、じらさないで」
やっとの思いでレゴラスはそう言うと身を屈め、もう一度ハルディアに口づけます。

ハルディアと額をつけたレゴラスはそのままの姿勢で ハルディアのチュニックの紐を解き、 ハルディアを手伝ってチュニックを脱がせました。 それから自分のチュニックも脱ぎすてて草むらへと放り投げます。 熱い素肌が直接触れ合うと、2人をますます昂ぶらせました。 2人は性急にたがいのレギンスを紐解きますが、 より急いでいるのはレゴラスのほうでした。ハルディアがうっすらとほほ笑みます。

「で? 勝った者が相手を好きなようにできる、というこの勝者の権利、どう使うおつもりですか?」
精一杯真面目な表情を作って問うハルディアですが、 その双眸には疑いようもなく、炎のように情熱が燃えています。

「ああそれはね …… きみにしたいことはいろいろあるんだ」
レゴラスはそう呟くと、ハルディアの胸元からお腹、 それからお臍のあたりを指で円を描くようになぞりました。 ハルディアの胸がまるで長距離走を走り終えた後のように大きく上下します。

「…… でも君が今、いちばんしてほしいのはこれじゃないかなって、思うんだけど」
そう言うとレゴラスの頭はあっという間に下に行って、 ハルディアの屹立をぱくりと口にくわえてしまいました。

「ああ、レゴラス!」
ハルディアの息が荒ぶりました。 温かなレゴラスの咥内の感触をより求めて、自然と腰が前に出ます。 レゴラスは喉を緩めてハルディアを深く取り込むと、 根元に舌を這わせ軽く横ざまに歯をあてながら、 口をゆっくり引き抜きました。ハルディアはレゴラスの髪に指をからめて、声を出さずに喘ぎます。 ハルディアの身体が芯まで熱くなり、達してしまう間際にまでレゴラスは口淫を続けました。 急に温かい咥内が遠のきます。 ハルディアが不満の声を上げて視線を降ろすと、 濡れて光った自分の先端のすぐ脇で、レゴラスが笑顔でいるのがみえました。

「ああレゴラス、そこで止めるなんて …… それはひどい」
ハルディアが問うような眼差しをしてみせても、 レゴラスはまるで悪戯っ子のようににこにこしています。

「ぼくはただ、できるだけゆっくり君にこれを味わってもらおうと思ってるんだ」

ハルディアは大きくため息をつきました。 レゴラスがこのゲームをするのは初めてのことではなく、 それは耐え難いような苦痛とともに、信じられない位の快感をもたらすものだったのです。

レゴラスが長い睫でハルディアの腹部をくすぐりました。 レゴラスの顔はそのまま下へと、張り詰めたハルディアのものを避けるように動きます。 レゴラスがハルディアの腰骨に沿って口づけていくと、 ハルディアのそこはもっとレゴラスに触れようと動きました。 しかしレゴラスは、そんなハルディアの動きをことごとく巧みにかわしてしまいます。 ハルディアは柔らかい草叢に頭を押しつけて、信じがたいほどの快感にただ身を任せました。 これ以上ないほど堅く張ったハルディアの先端にやっとレゴラスが舌を沿わせると、 ハルディアはそれだけで達してしまいそうになりました。
「レゴ …… ラス!」
ハルディアの指が草叢のなか、土くれをつかみます。

ハルディアの絶頂が近づくにつれレゴラスも容赦なく攻めはじめました。 ハルディアが本当にいきそうになるとわざとペースを落としたり、すっかり動きを止めてしまったりするのです。 ハルディアの熱はいまにも弾け飛びそうでした。

「ああ! レゴラス、もう ---。 …… お願いです」
荒く息をするハルディアの目じりはその快感の大きさを表すようにうっすらと紅く染まっています。

「そんなふうに頼まれちゃったら僕も嫌とはいえないな ……」
レゴラスは顔を近づけて、またハルディアのペニスを咥内へと取り込みました。 唇から引き抜きながら軽く指を添わせます。 ハルディアにとってはそれが我慢の限界でした。 ハルディアはレゴラスの名を呼びながら、激しく埓を空けてしまいました。 レゴラスは出された白濁を一滴たりともこぼすことなく、嬉しそうに飲み干します。

レゴラスは汗濡れたハルディアにぴったりと肌を添わせ、 自分のレギンスを下げながら、ゆっくりと身体の上に乗り上げていきました。 まだ息の荒いハルディアの喉元に、何度も何度も口づけます。 ハルディアは呼吸が静まるとあらんかぎりの愛情と情熱を込め、レゴラスへと口づけました。 ハルディアの手がレゴラスの背骨をなぞるように降りていけば、 レゴラスの背は美しい弧を描いて反り返り、ハルディアの腹に堅く張ったものを押し付けます。 レゴラスが唇でハルディアの耳先を弄びました。 ハルディアの指はレゴラスの腰骨を羽根が触れるように撫でていたかと思うと、 突然、レゴラスのペニスをきゅっとつかんで握りこみました。

ハルディアの耳元すぐそばであっと喘いだレゴラスの吐息が、 ハルディアの耳元、敏感な場所を痺れさすように掠めていきます。レゴラスを握ったハルディアの手は、 一度ゆっくり根元に向かって動いてから、今度は素早く先端に向けてしごきあげ、 親指の先でこねまわすように敏感な先端をつつきました。 ハルディアは先端ににじんだその液体を指で掬い取り、舌先に乗せると、 レゴラスを抱き寄せ口づけました。 レゴラスはハルディアの舌で自らの先走りを味わいながら、 腰を揺らめかせしきりとハルディアに自身をこすりつけています。

ハルディアが手を伸ばすとレゴラスの下腹部は緊張に堅く締まっていて、 レゴラスももう絶頂が近いのがわかります。 棹を握ってしごいてやりながら、ハルディアはレゴラスの乳首へと顔を寄せて、その突起をきつく唇で吸い上げました。 レゴラスにはこれが効いたようでした。ハルディアの掌、そして腹にレゴラスの白いものが飛び散りました。 ハルディアは笑顔でレゴラスの胸元に口づけました。

「ああヴァラよ、たったいま、ぼくはエアレンディルを見た気がするよ!」
レゴラスは脱力してハルディアの上にぐったりとかぶさると、ハルディアの肩と首に優しく口づけました。

「ああ、わが年下の君、貴方とこうして永遠の時を過ごせるのは、私にとって大きな喜びです」
ハルディアが満足気にため息をつきました。

「ずっとこのままこうしてたいね ……。でもいいかげん戻らないとそろそろ誰か僕たちを探しにくるかも」
ハルディアも空を見上げ、うなずきました。

「確かにそうですね。昼食の時間はとうに過ぎてしまったし、今から帰ったとしても結構な時間だ。 もう行かなくては、何かあったと思われても仕方がない」
ハルディアはにっこり笑ってレゴラスの腕を取り、一緒に身を起こしました。 そうして2人は笑顔で散らばった服を集め、身に着けました。

レゴラスは最後に自分の弓と矢筒を拾いあげると、 既に騎乗して待つハルディアのほうを振り返りました。 自分の馬に跨ると、レゴラスはゆっくりと彼の元に馬を寄せて、悪戯めいた笑みでこう言いました。

「館まで軽ーく競争してみる、ってのはどう?」

ハルディアもやんちゃに瞳をきらめかせ、笑顔で同意を伝えます。 すぐさまレゴラスは馬を蹴り、小道の向こうへと消えていきました。 ハルディアは笑みを浮かべながら、館では今度はなにが自分を待ち構えているだろうかと考えました。 それからハルディアもまた、馬の腹を軽く蹴って金髪のエルフの後を追っていきました。 2人の姿はすぐに小道の先、見えなくなりました。後に残されたのはただ、 音楽のような笑い声、そして小道を駆けていく馬の蹄の音だけでした。




*〜 THE END 〜*



〜 管理人よりひとこと







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