第 9 章  稲妻、雷鳴




なまめかしく横たわる双子たちの真ん中にレゴラスは倒れこみました。絶頂の余韻がまだ身体中を駆け巡っています。こんなに素晴らしいことがいちどきに起こるなんて、レゴラスはまだ信じられませんでした。

「僕たちの面倒もみてくれるっていったけど、だったらそのまえにまず」エルラダンがふふと笑います。「もう一度きみに復活してもらわないと、ね。でなきゃこっちのお尻に申し訳ないだろ?」エルラダンが楽しそうに手を伸ばして、ぱちんとエルロヒアのお尻を叩きました。

双子の弟は心地よい痺れに声をあげました。「あぁ王子、もう待てない、早くして」

エルラダンが寝台を滑り降り、隅にある棚に向かうと棚から小壜を取り出して、それを手に戻ってきます。

「…… ああ、なるほど倉庫からの帰りが遅かった訳だ、いまわかったよ」エルロヒアが言いました。

「きみが甲冑を合わせてる間、いろいろと手持ちの品を補充してたのさ。家に帰るのに必要な備品だとか …… こういうちょっとした品々とかをね」壜の蓋を取ってエルラダンが差し出します。エルロヒアは受け取ると鼻を近づけました。

「お、これはいい」匂いを嗅ぐと、エルロヒアが言いました。「これだけの品をただでとは、倉庫番も言わなかったんじゃない?」

「それはもちろん、お互い納得できるようにしたのさ」エルラダンはしれっと答えます。

「ほんとに君たち2人って …… 父さんがまた雷を落とすよ」レゴラスは諌めるように言いました。

「倉庫番のことなんか父君は気にしないと思うけど、でもいまから僕が君にしようとしてることを知ったら、父君はまちがいなく怒り狂うだろうね」エルラダンはそう言うと、手に壜の液体をすこし垂らし、丁寧にレゴラスのペニスと下の袋に塗りこみはじめました。「これが効いたら大丈夫」エルラダンはにやりと笑いました。エルラダンの指がさらにその下を探って、レゴラスの窪みを見つけると、そこを繰り返しゆっくりとさすります。

肌にねっとりと絡むオイルの感触は、ひんやり甘い痺れるような刺激となって、王子の下半身から全身へと広がっていきました。エルラダンの男根が目にはいります。誘うようにそそりたっているそれは大きく堅そうで、あれが中に押し入ってくる、その瞬間を想像してレゴラスは唇を噛みました。ターロとするときは、いつでも貫かれる最初のときはすごく痛かったのです。目を上げると、エルロヒアがまたミルヴォールを差し出しました。レゴラスはグラスを受け取りました。

「ちょっと飲むだけで充分効くからね」エルロヒアがそう言っている間に、レゴラスはグラスを半分空けてしまいました。「勿論いっぱい飲んだら効き目もそれだけ強まるよ」笑いながらエルロヒアが言いました。

エルロヒアはレゴラスの隣に寝そべると、王子の髪に手を差し入れ、首筋から髪をかきあげました。「エルラダン」エルロヒアが呼びかけました。「僕たちの可愛い王子にそろそろ次の段階を紹介しよう」

レゴラスが問うようにエルラダンを見上げます。

エルロヒアはまた笑って、露わになったレゴラスの首筋を味わうように軽く歯を立てました。はやく満たされたい気持ちは募る一方でした。美しい王子との身体のつながりはもちろん、兄との心の融合も待ちきれませんでした。兄は手を止めずにレゴラスの男根にオイルを塗りこめています。レゴラス自身が段々とまた昂ぶりはじめるのをみて、エルロヒアは心がはやりました。

「王子、僕たち2人はちょっと特別な能力を持っていて、今夜は君と、それをわかちあいたいと思ってるんだ」エルロヒアが言いました。

「僕たちはいつもお互いが何を考えてるのかすぐわかるんだけど、或る特殊な状況の下では、僕たちは片方の感覚をまったく同様に感じることができる」エルラダンが意味ありげにレゴラスの目を覗き込みました。「まったく同じようにね」

レゴラスの視線の先で、エルラダンの色めく眼差しは賢しげな狼のように煌きました。レゴラスがもう一方へと目を移すと、そこでもまったく同じ双眸が輝いています。レゴラスの背をぞくりとするものが走りました。「それって ……?」レゴラスが言いかけました。

「心をつなげることができるんだ。僕たちの感覚を、君も感じることができる。僕たちも君の感覚が感じられる。一人の心から別の一人の心へ移動できるようになるんだ。誰かひとりの感覚でもいいし、一度に全員のでもいい」エルラダンがにやりと笑います。「もし耐えられるならだけどね」

「どう思う、レゴラス? …… やってみたい?」エルロヒアが問いました。

2人の耳にレゴラスの笑い声が心地よく響きました。「あぁ友よ、君たちの才能はほんとに計り知れないね! もちろんさ。もしその後、生きてこの目で朝日を見られなかったとしても、それは最高の、ああ、栄誉の死だろうね」

双子たちがぱっと笑顔になりました。エルラダンが両手でエルロヒアの顔を包むように、額を近づけます。兄の心は近く、あんなに焦がれた融合の時がいま迫っているのを、エルロヒアは感じました。エルラダンの考えはもう少しで聞き取れそうなところまで近づいていました。しかしそれはまだ部屋の向こう側のささやき声ほどにしか聞こえませんでした。「もうすぐひとつになれる」エルラダンがそう言うと、双子の弟はじっと兄の目を見てこくりとうなずきました。

エルロヒアは美しい漆黒の髪の兄から、黄金の王子へと眼を移しました。寄り添って座る3人の脚が触れ合い、高まる熱気は痺れるようでした。ペレジルは目元に落ちたレゴラスの髪の毛をそっと払いのけました。

そのとき稲妻が光りました。一瞬の雷光は天井アーチに届くほど高い水晶窓の向こうから、部屋の中を照らし出します。少し遅れて、遠方に雷鳴の轟きが聞こえます。嵐の勢いがまた強まってきました。

エルロヒアが枕に頭を乗せ、両手を差しのべます。「レゴラス、来て。僕を抱いて」

レゴラスは喉奥から、んっと返事をして、双子の弟を寝台に押し付けのしかかりました。顔じゅうに激しい口づけの雨を降らせてから、白くそり返ったエルロヒアのその喉元にも熱い口づけていきます。表の嵐と同じ勢いでレゴラスが腰を動かし、エルロヒアにすりつけました。

「そう!」エルロヒアが喘ぎます。「激しくして!」レゴラスが双子の体の下の方へと動き、エルロヒアの棹をいきなり口に入れました。エルロヒアがあっと叫んで腰を突き上げます。「ああ神よ! エルラダン、この子の口は …… すごくいい!」

「もうすぐ僕も感じるさ」エルラダンはそう言ってレゴラスの後ろに回ると、レゴラスの尻の割れ目に自分のものをなすりつけるように腰を動かし始めました。

レゴラスは双子の弟の身がわななき、意味を成さない言葉が口をついて出るまで口淫を続けました。それからおもむろに身を離し、エルロヒアに問いました。「準備はいい?」

息荒く双子の弟がうなずきます。

「うつ伏せになって」エルラダンが言いました。「そのほうがいい」

背を向けたエルロヒアのその滑らかな双丘にレゴラスは優しく口づけました。エルラダンが手を伸ばして寝台の脇からオイルの壜を取りました。「ほら、レゴラス、手を出して」エルラダンはレゴラスの手のひらにたっぷりとオイルを落とします。

レゴラスは両手にオイルを伸ばしてエルロヒアの双丘を割り、慣れない様子で窪みに一本、指を押し込みました。エルロヒアがああっと声を上げます。

「痛い?」レゴラスが不安げに問いました。

「ううん」エルロヒアが呻きます。

「レゴラス、広げるのはこうするんだ」エルラダンはそう言うと指を2本エルロヒアに突きいれて、中で開くようにゆっくりと出し入れしてみせました。エルロヒアがもだえ、喘ぎます。エルラダンが言います。「見せて欲しいんだ。僕の兄弟としてるところをね。できるだけ激しくしてやって」エルラダンが小悪魔のような笑みを浮かべました。「それはもう、泣き叫ぶくらいに激しくね」

「そう、泣き叫ぶ位に、ね」エルロヒアが笑います。

エルラダンはオイルにぬめった手でレゴラスのペニスを弄びました。王子はもうすっかり堅くなっています。「愛しいエルロ、彼はもう準備ができてる」エルラダンが問いました。「用意はいい?」

エルロヒアが体の下でひざを折り曲げ、誘うように腰を突き出しました。エルラダンが脇に寄り、そのほの暗い桃色の窪みを指でさすって優しく玉を握りました。レゴラスはひざ立ちになって、エルロヒアの背後から窪みに自身を押し付けました。心臓は早鐘を打っています。レゴラスは意を決して、一気にその堅い蕾を貫きました。すぐに熱く濡れた内壁が自身を包みこみます。ああ神様!なんて感覚!

「んっ---あぁ!」エルロヒアが叫びます。「あぁ、レゴラス、すごくいい。もう少し下。そう、そこ。動いて!」

レゴラスは激しく腰を使いはじめました。エルロヒアの腰をきつくつかんで大きく引き抜くと、また奥まで突き入れます。こんな快感は初めてでした。想像したこともないような素晴らしさです。レゴラスの下ではエルロヒアがもだえ喘ぎながら、時折り肩越しにレゴラスを振り返っています。

「レゴラス、ちょっとじっとして」エルラダンが言いました。

「ああっ、どうして?」焦れたレゴラスが聞き返します。ここでやめるなんて嫌でした。

「僕の番だ」エルラダンが低い声で言って、レゴラスの下腹に腕をまわしました。「だからちょっとじっとしてて」寝台の脇に立ったエルラダンが王子の体を端へと引き寄せます。そして優しくレゴラスの背を押しました。「体を倒して」エルラダンが言いました。

あの避けようのない痛みを思い出し、レゴラスは思わず身を固くします。

「力を抜いて」一本指を入れながらエルラダンがたずねました。「前の恋人とするときは、痛かったのかい?」

「…… ん、最初だけ …… ね」レゴラスが答えます。

「僕なら痛くなくしてあげる」エルラダンが口の中でなにやら歌うような、呪文のようなものをつぶやき始めました。耳を傾けるとレゴラスは次第に体から力が抜けるのを感じました。双子の兄のものが優しくレゴラスの窪みをつつきます。レゴラスに緊張する間も与えず、エルラダンの男根が一気に奥まで押し入りました。少しひりついたものの、貫かれる痛みがそれほどでもなかったことにレゴラスはほっとしました。レゴラスの臀部にエルラダンの腹部がぴったりとついています。

「あっ ……」王子が呻きます。こんな不思議な感覚は初めてでした。自分の穴はエルラダンに大きく広げられているのに、それと同時に自分自身はエルロヒアの奥深く埋め込まれているのです。双子の弟はわずかに声を上げながら腰を揺らめかせました。

「ああ神よ! レゴラス!」エルラダンが悦楽の声を上げました。

「ラダン、愛しい君 ---」エルロヒアが搾り出すような声で言います。「僕たちをつなげて! --- 今すぐに!」

エルラダンが両手を前に伸ばし、レゴラスの額に当てました。レゴラスの頭の中でペレジルの声が響きます。「ウトゥリエン(我来たり)。おいで、僕たちはつながる。君は僕たちと同じものを感じるんだ」

エルロヒアは兄が自分の心につながったのを感じて、胸を躍らせました。レゴラスのものでいっぱいに満たされながらも、その次には兄の男根に貫かれたレゴラスの感覚を共有します。それはまるで温かい河の流れに乗って、3人の感覚を順番に巡っているようでした。エルロヒアは自分をひとつに、完全にするあの平安のときを味わいました。この完全な音楽に、王子の甘く無垢な精神と、やみくもに悦楽を求める素朴さが瑞々しい旋律を加えています。

はじめレゴラスはこの感覚に焦点をあわせられませんでした。まるでぼやけたひとつの感覚に包まれているようです。しかしそれぞれの感覚はやがて、くっきりと浮かび上がり始めました。レゴラスが感覚を共有します。自分の穴に根元まで埋められ、きつく締め付けられているのはエルラダンの男根です。同時にエルロヒア、彼の穴はレゴラス自身でいっぱいに広げられています。レゴラスが腰を突き上げるとエルロヒアの感じた内奥の一点に感覚が同調し、頭がくらくらしてきます。同じ場所を何度も何度も突き上げるとエルロヒアの腰全体を蜜のような悦楽が広がっていくのがわかります。

「そう、レゴラス、わかっただろう?」エルロヒアが叫びました。「エルラダン、感じるかい?」

「ああ---、いいね」エルラダンがうめきながら答えます。「レゴラス」エルラダンが言いました。「君のペースに合わせるよ。僕たち2人のあいだで、君が動くんだ」王子はうなずくと激しくエルロヒアに突き入れました。それから限界まで引き抜くと、自らをエルラダンに深く貫かせます。

「そう、その調子」エルラダンは淫らに揺らめく王子に一層深く突き入れると、床に脚を踏ん張って王子の背中を手で強く押さえました。2人の間で王子が動きを早めます。双子たちのあげる悦楽の声が大きくなりました。

レゴラス、僕たちをいかせて、エルロヒアは自分の思考が他の2人へ飛んだのがわかりました。

「喜んで、美しいお2人」レゴラスがほぅっと息を吐きました。王子の手が伸び、エルロヒアの張り詰めた棹を握ります。

エルロヒアは兄が王子のなかにずっぽりと入っているのが感じられます。レゴラスは声を上げながら腰の動きを強め、早めていきます。

あぁ、我が誘惑よ、金の王子を通じて、僕を感じて、エルラダンがささやきます。

僕は君のもの、エルロヒアが答えます。兄さん、もっと、激しくして。

もっと君が欲しい、僕の愛でいっぱいにしたい。君を愛してる、全身で! エルロヒア、大丈夫かい? エルラダンが問いました。

うん、兄さん、あの暗闇は今はない。喜びだけだ。我が心の星よ、僕の愛は君のもの! エルロヒアが息を継ぎました。

双子たちの心が愉悦にとろけだし、互いにまきつくのをレゴラスは感じました。エルロヒアがレゴラスに思考を飛ばします。レゴラス、愛しい君、君は素晴らしいよ! 僕たちを感じるかい? これを君は理解できるかい?

うん、感じる、2人の激しい感情に押しつぶされそうになりながらもレゴラスは答えます。レゴラスの昂ぶりは弾けそうなほど張り詰め、エルロヒアへの抽挿はさらに速まりました。レゴラスの身体が動くたびにエルロヒアの感覚はレゴラスに反射され、エルラダンがレゴラスの同じ場所を突けば同時にやはり同じ感覚がレゴラスを襲いました。

レゴラスは全員、絶頂のときが近いのを感じていました。他の2人の感覚でレゴラス自身の感度も倍増しています。それはいままでに経験したことのない、恐ろしいほどの快感でした。レゴラスが動くたびにエルラダンの指が腰にきつく食い込みます。

一瞬の雷光で3人の姿、張り詰めた筋肉の陰影が白黒の絵画のように浮かび上がりました。絡み合った3つの体がまるで大きな破城槌のように動きます。ひときわ大きな雷が落ち、野獣の雄たけぶような雷鳴が3人の胸奥を震わせました。

「もう---いきそう」レゴラスが息を切らせ言います。

一緒にいこう。双子たちが了解の声を上げました。

爆発するような恍惚の輝きが同時に3人を飲み込みました。3人はひときわ大きな声をあげ、身体を震わせながら同時に快楽の絶頂に達しました。レゴラスはエルロヒアの汗に濡れた腰を引き寄せ、双子の奥深くに激しく迸らせました。体が緊張し、ペースを落としながらも3人はゆっくりと動きを続け、やがて息も荒いまま、3人の動きが止まりました。

エルラダンは荒く息をつきながらレゴラスの中から自身を引き抜くと、弟の体の横にごろりと横たわりました。レゴラスもエルロヒアの隣に崩れ落ちます。エルロヒアが上を向いて、レゴラスを腕に引き寄せました。

窓に打ち付ける雨音に耳を澄ませながら、3人はしばらくそのままじっと動きませんでした。じんじんと残る悦楽の余韻に、ただ黙って身を任せます。エルロヒアは王子の体にぴったりくっついて、あごをレゴラスの肩に乗せています。エルラダンは弟の首筋に口付けながら片腕をエルロヒアの腰に回して弟の背中に身体を密着させました。

「大丈夫 …… みたいだな」エルラダンが弟に問いました。エルロヒアは顔を動かして兄のほうに目を向けると、そこに自分を思いやる愛に満ちた眼差しを認めてゆっくりと兄にほほ笑みかけました。

「すべて順調だよ、だいじょうぶ」エルロヒアが答えます。

「よかった」エルラダンがほっとため息をつきました。

2人の間で交錯した不思議な感情を、そのときレゴラスは感じ取りました。一見無邪気で仲がよいばかりにみえるこの2人に隠された暗黒と哀しみに、レゴラスは今、初めて気がつきました。レゴラスはふと、2人のこの暗黒の部分が表にでたなら、この双子たちはいったいどうなってしまうのだろうか、そんな疑問が心に浮かびました。

レゴラスを見やったエルロヒアの瞳に、ちらりと心配気な色が浮かびました。しかしエルロヒアはすぐ気を取り直すと、甘美な表情でレゴラスにほほ笑みかけました。「レゴラス、君は最高だ。才能あるよ」

「僕がだって? 才能があるのは君たちのほうだよ」レゴラスは感嘆したように言って、じっと2人を見つめました。エルロヒアの後ろではエルラダンが片肘をついてレゴラスを見ています。「君たちの能力は本当に特別だよ。こんな才能ある恋人たちと、僕は今まで …… ほんとに ……」レゴラスが言葉を失って口ごもります。

双子は同時にくすくすと笑いだしました。

「僕たちはまだ、知りあってまもないんだから」エルロヒアが囁き、レゴラスの肩を甘く噛みました。「回数を重ねたらきっともっと良くなる」

レゴラスは幸せそうな吐息を洩らしました。

「君が望むならこれからだって僕たちはこんな夜をたくさん過ごせるよ」エルラダンが言いました。

「でもどうやって?」レゴラスは問いました。「君たちはもうすぐここを発つんだ。でも父さんが僕がここを出てもいいって決めるまでは、僕はずっとここに置いてきぼりさ」

エルラダンがミステリアスな微笑みを浮かべます。「美しい君、僕たちに任せておけば大丈夫。…… いずれにせよ、スランドュイルとは一度、きちんと話をしてみようって考えてたところだ。彼だってもう子離れして、僕たちみたいな親切なエルフに息子の世話を任せてもいい頃合だ、そうだろ、兄弟?」

「まったく同感」エルロヒアがにっこりしました。「年下の友人を僕たちの故郷、イムラドリスに連れて行こう」エルロヒアがレゴラスの胸元をさすります。「僕たちと一緒に色んな経験をするんだ」

レゴラスが憧憬の眼差しを浮かべるのを見て、エルロヒアはまた笑顔になりました。王子の意識とのつながりの名残はまだ2人のあいだに残っていて、レゴラスが心の底から自分たちと一緒に来たがっている様子がエルロヒアにはよくわかったのです。そんな王子がエルロヒアにはとても愛しく思えました。3人でしばらく野に出て冒険というのも悪くない、そう思いました。この王子に自分がすっかり魅了されてしまったと、エルロヒアはそう認めざるを得ませんでした。

表では嵐の勢いが弱まって、雨音は耳に心地よい、柔らかな音へと変わっていました。エルロヒアはまた自身が昂ぶり始めるのを感じました。手を下に伸ばし、兄の男根を探ります。

「ねえ兄弟 …… もう一回、できるかな?」エルロヒアが聞きました。

レゴラスがうめき声を上げて身を起こしました。「今何時だろう?」

「かなり遅いな」エルラダンが答えます。「満足するってことを知らない僕の弟はおいておくとして、レゴラス、君は誰かに見つかる前にそろそろ部屋に戻った方がいい」

「まだ行きたくないな」レゴラスが言います。「ここでこうしてるとすっごくいい気持ち」そう言って腕を伸ばすと、レゴラスはエルロヒアの首に吸い付きました。

エルラダンは立ちあがり、洗面台の石鹸水と布で自分の体を清めました。濡らした布を手に戻ってくると、今度は弟とレゴラスの体を拭いてやります。「気をつけて行動していれば、またこんな夜を迎えられるかもしれない。だけど」エルラダンは諌めます。「もし注意しなかったら、もう二度とこうやって夜を過ごすことはできないかもしれないんだよ」

レゴラスはため息をつきました。「エルラダン、君の言うことは正しいね」レゴラスは寝台を降り、あたりを見回しました。「さて、…… この広い中つ国、僕の服は一体どこだろう?」

突然、部屋の扉が乱暴に叩かれました。一番恐れていた事態に、3人はその場で固まりました。扉を叩く音はますます大きくなります。扉の向こうでタラガンの声が聞こえました。「エルロンドのご子息たちよ、いらっしゃいますか? 王がお話しをしたいとお見えです」

エルラダンが唇に指をあてました。レゴラスはあわてて服を探しましたが、服は部屋のあちこちに散らばっています。裏返しで丸まったレギンスを、レゴラスは胸のところに抱えこみました。あまりのことにレゴラスはもう可笑しくなってしまい、唇の端がひくひくと動きます。エルロヒアも手を貸そうと立ち上がって、上着やチュニックを拾うと部屋の片隅へと放り投げました。

3人の耳にスランドュイルの怒声が聞こえました。「エルラダン、エルロヒア! 今すぐこの扉を開けろ!」






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