Unwilling Consort









Part 2

朦朧とする意識のなか、捕らわれの身となったエルフはおぼろげに自分がどこかに運ばれてゆくのを感じていた。 しかし絶え間なく自分を飲み込もうとする闇と戦うだけで精一杯だった。 宙を漂いながらもどこにも何もつかまりようがない、そんな感覚だった。 なにが起きているのかまったく把握できないまま、ついに王子は深い眠りへと落ちていった。





ゆっくりと聴覚が戻ってきた。遠くに滝の流れる音が聞こえる。 そう、この音で眼が覚めたんだった。レゴラスは静かに瞼を開いたが、視界はまだぼやけたままだった。

力が入らない。四肢がまったく言うことを聞かず、まるで自分の体ではないようだった。薄く開いた唇から軽いうめき声が漏れる。頭がぼうっとして最悪な気分だった。

いったい何が起きたのか、レゴラスは懸命に考えようとしたがなにも思い出せなかった。 −−− 頭の中は空っぽだった。 そのときふと、彩色を施された美しい天井の彫刻が目に入った。 あれは、なに? 闇の森の自分の部屋の天井はあんなふうじゃない。 それに差し込む光。部屋がこんなに明るいなんて …… なにかがおかしかった。

突然、胸もとをするりとなにか温かいものが触れた。 その感触に、初めてレゴラスは自分が裸でいたことに気がついた。 無防備な胸元をぶしつけに這い回る手。 怒りに上体を起こそうと試みるが、すぐに激しい頭痛と吐き気に襲われる。 こみ上げる悪寒をレゴラスは枕に頭を落とし必死にこらえた。

ふふとあざ笑うような声が聞こえる。それからまた、あの手のひらの触れる感触。 手の持ち主はひとりではなかった。 恥ずかしげもなくレゴラスの裸体を這い回りだした手のひらの数は、全部で4つあった。

パニックをおさえながらレゴラスはゆっくりと頭をあげた。眼に入ったのは、ひざ立ちで両側からかがみこんでいる2人の男性のエルフだった。まっすぐな黒い髪をして互いにうりふたつなその2人は、恐ろしいことに自分と同じく、なにも身につけていなかった。最悪だったのは、2人の股間のものはその大きさを誇示するように隆々と天をあおいでいたことだった。

2人の瞳にはよからぬ欲望がありありと浮かんでいた。手のひらは休むことなくレゴラスの身体、 そして王子の萎えた男根をまさぐっていた。慣れたようにそこをしごかれて、思わずレゴラスから声があがる。 王子はまだ未通だった。 だからこんな状況でどうして自分の身体が好ましくない反応を示してしまうのか理解できなかった。

「触るな!」 レゴラスから声にならない声があがる。薬の効果はまだ切れていないようだった。

レゴラスは力を振り絞って双子を蹴り飛ばそうとした。けれども双子たちはレゴラスの足をやすやすと押さえつけた。

「はなせ!」 レゴラスが叫んだ。

けれども双子の片割れが乳首をひねって唇を押し付け、舌先で転がしはじめると、 抗議の声はすぐに甘い嬌声へと変わった。それをみたもうひとりも 王子の足を離し、唇に吸いついて存分に貪りはじめた。

エルフの若者は歯を食いしばった。 けれどももう一度乳首をきつくつねられると、その痛さに声を出さずにいられない。 その隙をついてすかさず濡れた舌がレゴラスの口内に挿し込まれる。 侵入を果たしたその舌は、嫌がる王子にかまわず咥内をくまなく探りだした。 なんとか抵抗しようとして、 王子は懸命に舌を奥へと引っ込めるが、いったん入り込んだ舌の侵入を阻むことはできなかった。

止むことなく攻め続ける2人に、王子の体は意に反していつしか快感を覚えていた。2人を押しのけようとしても、それはまるで倒れることを知らない2匹のオークを相手にしているようなものだった。

こんな風に奪われるなんて、レゴラスは考えたこともなかった。 この相手ならと思える誰かとめぐり会えるまで誰とも契りをかわすことはない、王子はそうずっと信じてきた。 こんな風に犯され、奪われるなんて ……、自分だけではない、家族にとっても悲しむべきことだった。

ひとりがベッドを離れたかと思うと、すぐさま透明な黄色の液体のはいったガラスの小びんを手に戻ってきた。 蓋を開けると黒髪のエルフは自分の指を3本、そこにつけた。

オイルにぬめったエルラダンの指が王子の足の間に向かう。 エルロヒアが片方の手で王子の胸を押さえながら、もう一方の手でレゴラスの右腿をぐいと割り開いた。 エルラダンは左の足を押さえつけ、まだ誰にも許されたことのない王子のくぼみに人差し指を滑り込ませる。 レゴラスの未通の穴に、容赦なくエルラダンの指が潜り込んでいった。

レゴラスは恐怖と痛さで悲鳴をあげた。刺すようなその痛みから懸命に身を引こうとしても、 その間にもう、また一本エルラダンが指を入れてくる。 2本目の指の侵入にレゴラスはもう叫ばなかった。 ただ歯をくいしばって堪えるレゴラスの唇から、いつのまに噛んでしまったのか、 血がたらりと流れ落ちた。 やみくもに振り回した手がエルラダンにあたり、双子の兄は体勢を崩して後ろに尻をついた。

腹を立てたエルラダンはレゴラスの体の上にまたがった。 高く右手を掲げるときつい平手打ちがレゴラスの顔に飛ぶ。身動きできないエルフの顔が右へ、左へと打たれ続けた。 打たれるたびに柔い肌が熱く痛んだ。頬の感覚が次第になくなり、レゴラスは抗うこともできずされるがままだった。

遊びにも飽き、エルラダンはもう張り詰めた肉棒で熱い穴を感じたくてたまらなかった。身体を下にずらし、割り裂かれた王子の足の間にひざを割りいれる。両足を胸の下で抱え込むと、エルラダンは力なく抵抗する王子をぐいと押さえつけた。

振りほどこうとする王子の両手をすかさずエルロヒアが頭上で拘束する。 鋼鉄のような力で手首を絞めあげられ、王子が苦痛に声をあげた。 目の前に覆いかぶさるエルラダンを見ると、レゴラスの顔から血の気が引いていった。

堅くそそり立ったものをあてがうと、エルラダンはオイルもつけないまま力づくでレゴラスの中に押し入った。 レゴラスが絶叫した。絶望のなかレゴラスは激しく身を捩じらせる。 しかしそれは空しい抵抗だった。 諦める以外、道は残っていなかった。

エルラダンはやっと奥まで自身をねじこむと、荒々しく腰を打ちつけはじめた。

レゴラスから断末魔の獣のような悲鳴がもれる。ばらばらに体が引き裂かれるようだった。 顔からはすっかり血の気が引き、肺から空気を搾りだすような声で王子は絶叫し続けた。体がぶるぶると震えだし、力が入らぬ両足はすっかり萎えていた。

熱い涙がぽろぽろと若いエルフの頬をこぼれ落ちた。体からは冷や汗がしたたり落ちていく。 乱暴に突き続けるエルラダンの腰の動きにあわせ、 ひとまわり小さな王子の体がベッドの上で激しく揺さぶられ跳ね上がる。 こんな恐ろしい痛みと辱めから今すぐ逃げたい、もう死んでしまいたい、そうレゴラスは祈るしかなかった。 けれどそのレゴラスの願いは神には届かなかった。

それどころか、エルラダンが果てるとすぐ次に今度はエルロヒアがおおいかぶさってきた。 エルロヒアはふるふると震える王子の体を今度はうつぶせにし、よつんばいにさせた。腰を高く上げさせると裂けた後腔から血に混じり白いエルラダンの精液がたらりと流れ落ちた。

エルロヒアもオイルを使うことなく、レゴラスの背後に位置を定めると、一気に突きいれた。血と精液を潤滑剤にして、エルロヒアの肉棒はそれほど抵抗もなく中まで入り込む。エルロヒアはきつい内壁に根元まで包み込まれたのを感じると、レゴラスの腰を両手で痣ができるほど強く掴み、狂ったように腰を動かしだした。

息も絶えそうなほどの痛みがレゴラスを襲っていた。四肢は震えひざに力がはいらない。 上げ続けた悲鳴のせいでもう喉もかれかけていた。 レゴラスの視界は暗闇となり、聞こえてくるのはエルロヒアの荒い呼吸の音だけだった。 そのエルロヒアがついに達したのを聞き届けたときには レゴラスはやっとほっと息をついた。

しかし鍛え抜いた戦士の2人には疲れた様子などまったくなく、 陵辱を終わらせるつもりもさらさらないようだった。 その後もただひたすら、2人は抵抗できぬエルフを (なぶ) りつづけた。抵抗しようとして打たれた跡がレゴラスの体中にあざとなった。流れる血は内股にすじを残しベッドへと滴り落ちる、凄惨な光景だった。

その夜、ようやくこの新しい玩具を苛むのに2人が飽いたのは、それから何時間も経ってからのことだった。 2人のあいだにはぴくりともしない、疲労しきったレゴラスがいた。 絡み合った手足を解すこともなく、3人は石のような眠りに落ちていった。





朝になり、双子たちを呼びに遣わされたグロールフィンデルは、 思わず部屋に眠る闇の森の王子の姿に眼を奪われた。顔に残る薄い痣、涙の跡。でもそれにもかかわらず、王子の顔は気高く美しかった。

グロールフィンデルがこの捕らわれの王子の顔をきちんと目にできたのは実はこれが初めてだった。 国境で勝ち誇ったようにグロールフィンデルのもとに現れた双子たちは獲物を黒い上着ですっぽりと包み隠していて、 エルラダンはしっかり抱きかかえたその布の中身をグロールフィンデルには見せようとしなかった。 このときグロールフィンデルが目にできたのは、目深にかぶせられたフードからのぞく金髪の一部と、 そしてほんの一瞬、ちらりと垣間見えた青白い面差しだけだった。 そのときは一刻たりともぐずぐずしていられなかった。一行は即座にその場を離れ、裂け谷へと戻らなければならなかった。

イムラドリスへと向かう道中では、捕らわれのエルフはずっと薬で動きを封じられていた。

エルダールの戦士はこのさらわれてきた王子を驚嘆したような表情でじっと見つめていた。 しばらくして彼はふと我に帰り、いまだ眠ったままの双子、その近くにいるほうを揺り起こした。

「噂に聞いていたとおり、この王子は実に麗しい。 あの森の、間違った親元に生まれてきてしまったのはまったく、なんとも不運なことよ」  グロールフィンデルが口を開いた。

双子たちが笑顔を浮かべた。

「闇の森? ふん、この子はもう、裂け谷の所有物だ。 正確に言えばそれはつまり『僕らのもの』っていう意味だけどね」  エルロヒアの口調はこの戦利品を共有するつもりなどまったくないと言わんばかりだった。







Part 3

3人が部屋を出る前に、双子たちはレゴラスの手足を逃げないようベッドの四隅に縛りつけた。 片方が簡単に王子の傷を調べ、治療すべき場所がいくつかあるけれど緊急なものはないと確認する。

この新しい玩具を部屋に置きざりにしていくのは2人とも気が進まなかったが、それでも双子は急いで長衣を身につけた。 館の廊下に出て歩き始めると足ががくがくし、2人はいかに昨夜が激しかったか思い出さずにはいられなかった。

グロールフィンデルはといえば、この2人の後を歩きながら黙って想像に耽っていた。 体の下にあの若く美しいエルフを組み敷いて、快感で悶えさせるのはどんな心地だろう。 みだらな想像をめぐらせているとエルダールの頬がいつのまにかゆるんでいた。

2人の父は、朝食の間に入ってくる双子たちに気づき顔を上げた。 息子たちは疲れた様子ながらもにやにやと笑みを浮かべている。 昨夜はこの最後の憩い館に住まうエルフの半分以上がこの、さらわれてきた王子の声を聞いたことだろう。 あんな声をあげさせればそれも当然だった。昨夜の2人はそれほど激しかったのだ。

「おはようございます、父さん」 合わせたように声をかけ、2人は父の横の席についた。

双子の兄が懸命に欠伸をこらえるなか朝食が始まった。

「あの王子にはてこずったのかね?」 エルロンドの瞳がきらりと光った。 双子たちの寝室でなにがあったのか察しはつく、それでもエルロンドは冗談混じりに問うてみた。

ところがエルロンドの言葉に真っ先に顔を上げたのは、 広間にきたときからずっと押し黙ったままでいた金髪のエルダールだった。 閉じられた扉の向こう側で繰り広げられた昨夜の話が聞けるとでも思ってか、 グロールフィンデルの視線は探るようにエルラダンとエルロヒアの間を行き来した。

裂け谷で自分に次ぐ地位にあるこのエルフともあろうものが、 露骨に朝食の席で閨房の話に興味を示している −−− 自分の視線にも気づかぬその様子にエルロンドがぴくりと眉を上げた。 朝食の席でそんな話がされるなどありえない、にもかかわらず、 グロールフィンデルは明らかに双子の話を聞きたがっていた。

双子たちはとぼけたような顔をして互いに顔を見合わせ、やがてくすくすと笑い出した。

裂け谷の主もまだこの捕らわれのエルフを見ていなかった。しかし、やんちゃが過ぎる暴れん坊の双子の元にあの美しい王子がいるかぎり、そのうち否が応でも自分は王子の姿を目にすることになるだろう、エルロンド卿はそう思っていた。

エルラダンとエルロヒアはそそくさと食事を終えると、すぐにでも部屋に戻りたい素振りだった。 しかしエルロンドは息子たちにグロールフィンデルと一緒に書斎に来るようにと命じた。

計画の第一段階は完了だった。可愛がっている息子が捕らえられこちらの手元にあるとわかるまで、 スランドュイル王はそれこそくまなくすべての場所を探し回るだろう。 いつもは感情を見せず、厳しい表情を崩さないスランドュイルも今ごろ慌てふためいているに違いない。 イムラドリスの4人の貴人達はあの傲慢な王が度を失って慌てている顔をみてみたくてたまらなかった。

地図を開き、国境の内と外に配置すべき兵の数について4人が議論を続けていると、いつしか昼も近い時間になっていた。 4人は息子を奪い返しにスランドュイル王が兵を率いて裂け谷へ攻めてきた場合のことについても 議論を戦わせた。

裂け谷は霧降山脈という天然の要塞に守られ、敵からの正面攻撃を阻んでいた。 闇の森の軍が裂け谷に攻め入ろうとするならば、兵は山を越えてこなくてはならない。 その労苦の分だけ、兵を迎え撃つのは裂け谷のほうが有利であった。

計画の第二段階について父との打ち合わせが終わると、双子たちは子供みたいにくすくす笑い、互いにつつきあいながら、駆け足で書斎を出て行った。エルロンドははぁとため息をついて2人を見送ると、呆れたような表情で首を横に振った。

「あの2人ときたらまったく、幾千のエルフ兵を束ねる生まれついての戦士だというのに、 どうやったらああ、悪戯ざかりの子どもみたいに振舞えるのだろうな?」

グロールフィンデルが肩をすくめて見せた。

「さて、その昔、あれと実によく似た双子がいたような気がするのですが、 覚えているのはわたしだけでしょうかね。 まあ、ペレジルならでは、ですな」 グロールフィンデルはくすくす笑っている。

エルロンド卿がじろりとグロールフィンデルを睨みつける。 グロールフィンデルは楽しそうな笑顔で白い歯をきらめかせた。

「2人が配偶者とすべくさらってきたあのエルフ ……。 なるほど確かに、あれは言葉では言い尽くせない美しさだった」  グロールフィンデルが急にまじめな表情で言った。

「うーむ ……、昨夜のあの悲鳴を聞く限り、このままあやつらの手元に置いておけばそのうちあの子は …… 壊れてしまうやもしれないな」 エルロンドも真面目な面持ちで呟いた。





エルラダンは部屋へ戻る道すがら、厨房に食べ物と水をとりに立ち寄った。 これから先ずっと自分たちに仕える定めとなったあのエルフを手当てしてやるといって、 エルロヒアは一足早く部屋に戻っていた。父から学んだ癒しの技はエルロヒアのほうが得意だった。

エルラダンは盆にびんや食べ物を載せたまま慣れた調子で部屋へと駆け戻った。 ノックもせずに今朝がたレゴラスを置きざりにした部屋に入っていく。 エルロヒアはじっと固まったように動かないエルフのうえに身を屈めていた。

近くのテーブルに盆を置くと、エルラダンは傷を清め包帯を巻く弟のそばに歩み寄った。 2人が捕らえたエルフはもう拘束を解かれている。 しかしエルロヒアが触れるたびに、エルフの若者はびくりと身を震わせた。

3週間もの長旅のあいだ食事もなしにずっと薬を使われ続け、王子の体力は消耗しきっていた。 昨夜のことも合わせれば、王子がもう抵抗しようとしないのも無理はない。 レゴラスの痩せた体と浮いたあばら骨がエルラダンの眼に写った。

レゴラスは頭を上げるのさえ苦しくて、ただ双子のしたいようにさせていた。 弱々しい王子に2人はかわるがわる、まるで人形遊びのように手ずから食事を食べさせた。 レゴラスはずっと何も食べていなかったので頭がぼうっとして自分が最後に食事をしたのはいつだったかさえはっきりとわからなかった。

エルラダンがレゴラスの頭を起こし水を飲ませようとした。 けれども王子はうまく飲み干せず、王子の唇からこぼれた水滴が王子の喉をつたって流れ落ちる。 レゴラスが咳き込みだし、エルラダンは手を止めた。

レゴラスは咳をこらえようとして右の肋骨がひどく痛むのに気がついた。 かばうようにレゴラスの左手が胸を押さえる。エルロヒアが王子の手をのけて骨が折れていないかどうかチェックした。骨の折れた様子はなく、そこにはただ色鮮やかな痣があるだけだった。

長い間何も食べていなかったので、少しずつ胃が食物に慣れるようにと双子たちは一度にあまり強制はしなかった。 2人は残りの食事を盆に戻した。

双子のうち片方が ---レゴラスにはどちらも同じ顔に見えた --- 横に座ってレゴラスの頭を自分の胸に乗せる。 黒髪のエルフは乱れた金髪を指でほぐし、絡まっている編み込みの束を解き始めた。

「どうして僕をさらったの?」 レゴラスがかすれ声で呟いた。悲鳴を上げ続けたせいですっかり声が枯れていた。

「僕らに仕え、配偶者となれる美しいエルフが必要だったんだ」  レゴラスの問いにエルロヒアが答えた。 エルロヒアは兄の反対側で、やはり金髪に指を絡ませていた。

「きみたちは僕の意思に反して僕をここに連れてきた。そして、…… 僕を犯したんだ」 青白いレゴラスの頬を涙がこぼれ落ちた。 「まだ成年の儀も迎えてなかったのに」 そう言うとレゴラスは嗚咽を漏らし始めた。

「お前の父親の責任さ。全部、奴に感謝するんだな。 それと、自分のその美しさを呪うといい。こっちの計画に最適だったんだよ」  エルラダンが当然のように言った。

「昨日で僕らはもうお前に印をつけてしまった。あれが初めてだった、 そうなんだろ? 契りは交わされた、だからもうお前は僕らのものなんだ。 これからはここで僕ら2人に仕える、それがお前の運命だ」 エルロヒアが言った。

「僕は誰のものでもないよ!」 レゴラスは怒りを露わに怒鳴り、身を起こした。 王子の内で怒りが渦巻いていた。こんな風に人生をぶち壊されるなんて、許せるはずがなかった。

怒るレゴラスを双子たちは冷ややかに見つめるだけだった。

「さあどうだろうな、小さなエルフくん」 エルラダンがにっと笑う。

エルラダンの体が近づいてくる。一回り体の小さいエルフは危機を察知して後ろにずり下がった。 だが背後にいるもうひとりのエルフがあっというまに王子を捕まえる。 レゴラスは腕と胸をしっかりとかかえこまれ、身をよじったが逃げる手立てはなかった。 レゴラスの呼吸が速まった。

エルラダンが王子の唇を奪う。まるでその唇は自分のものだと主張するかのようだった。 もう逃げられない、そう気づいたエルフはあらためて恐怖に慄いた。 腕の中の王子が逃げようともがくたび劣情をかきたてられるエルロヒアのものがあっというまに質量を増していった。

兄が息を切らして唇を離すのを見て、エルロヒアは王子を乱暴にうつぶせた。 顔から先にベッドへと押し付けるとエルロヒアは背後からレゴラスにのしかかり、 太ももをひざで割り広げる。それからなんの準備もせず、いきなり乱暴に猛るものを突き立てた。

搾り出すような悲鳴がレゴラスから漏れた。 レゴラスが身を固くし、その動きで内壁にぎゅっと締められると、 それだけでもうエルロヒアは達してしまいそうだった。 エルロヒアはいったん動きを止め、まだいってしまわないよう堪えなくてはならなかった。

激痛が震える体を何度も貫くたびにレゴラスの視界に星の雨が散る。 レゴラスの歪む表情は長い金髪に覆い隠されていた。 汗と涙に濡れたベッドに顔を押し付けられ、レゴラスの体はエルロヒアにいいように揺さぶられていた。 レゴラスの呼吸は不規則だった。つまった鼻で息をするのも難しかった。

腰を掴む指の痛みもさることながら、そんな痛みとは比べ物にならないほどの痛みがレゴラスの魂を襲っていた。 レゴラスを支配するもうひとりのエルフがいつ交代したのかすらわからなかった。 レゴラスの視界は涙にゆがみ、止むことのない苦痛だけがただひたすらに続いていた。






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